感想

くらげなす漂うアメリカンアパレル

『ずっとお城で暮らしてる』

『ずっとお城で暮らしてる』シャーリイ・ジャクスン 創元推理文庫

(原題)『We have always live in castle』は、1962年刊行。

日本では1994年に学習研究社が刊行、2007年に創元推理文庫から新訳が出ている。

 

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

 

 

 

あらすじ

アメリカのとある村で、ひときわ大きな領地を誇るブラックウッド邸。しかしここは、六年前に起きた一家毒殺事件の現場でもあった。生き残りは主人公メリキャットとその姉コンスタンス、車椅子に乗ったジュリアンおじさんの3人だけだ。悪意ある村人たちから逃れ、幸せに暮らす3人家族。しかし、いとこチャールズの来訪によりすべての歯車が狂い始める。チャールズを悪霊と呼び、さまざまな方法で出ていかせようとするメリキャットだったが…

 

感想

・女の子は魔法で強くなる

18歳のメリキャットだが、その年にしては考えが幼いというか、極端な呪術的思考の持ち主である。村人から屋敷を守るために独創的な魔術を使ったり、チャールズを追い出すために「大きな鏡を割ろう」と考えたりする。そして、辛いことに直面するたび、「月の上ではね…」という枕詞を置くメリキャットはけなげであり、芯が強い。彼女は果たして、ほんものの月の上に行けたのか? 期待して読みたいところ。

 

・ジュリアンおじさんがツボ

六年前の毒殺事件について記憶をたぐり寄せ、ライフワークとして原稿を書いているジュリアンおじさん。この人が、事件当時なにが起きたか、裁判はどのように行われたのかなどを解説してくれる。認知症のリアルな描写がいい。可愛い感ある。

 

・猫のジョナスが最高かわいい

ホラー要素のある話なのかと思っていたので、猫ちゃん大丈夫かなとしんぱいだったけれど、最後まで健在です!我ながらこれはいいネタバレ!

 

・人間の気持ち悪さに触れられる!

村人やチャールズはもちろん、ブラックウッド邸で暮らす3人も、ものすごく人間的で、気持ち悪いほどいきいきと書かれている。心理を浮かび上がらせるような、光と闇のコントラストが面白い。

また、村という閉鎖社会の恐怖を好んで観賞するという読者にはうってつけの作品です。謎解き要素もちょっとあり。