気圧鬱で3日間キットチャンネルに恋してた話
この3日間、私はベッドから出られず、人のLINEも受け付けず、メールも返さずにいた。どうしても書かねばならぬ文章だけちょこちょこと書いて、あとはタオルケットにくるまってiPhoneを手にただじっとYouTubeを見ていた。
- YouTubeのおすすめ動画にキットチャンネルがでてきた
- わたしとFtM
- シスジェンダー女性の共感を得やすい
- ※うわああああああああ読まないでえええ
- コメントに反応する動画
- 「男性アイドルとして消費されるつもりはない」のでは?
- 恋すると元気なあほになる
- ありがとうきゃにゃしゃす!
YouTubeのおすすめ動画にキットチャンネルがでてきた
YouTubeを見る時の私というのは、たいてい憂鬱な気分に陥っていてベッドに張り付いている。暗闇で、スマートフォンで視聴できるYouTubeは、なんにもしたくない時の「ひたすらだらだらしたい」という気分にうってつけだった。その日、いつものように憂鬱気分に捕らわれた私は、ベッドでごろごろしながら「えむれなチャンネル」を見ていた。それから、オススメされた「しばなんチャンネル」の出産感動動画を視聴したのちに、なぜかオススメ動画の中に現れたのが、「キットチャンネル」だった。
わたしとFtM
「キットチャンネル」は、FtM(フィメールがメールに。トランス男性)の「英翔」と「奏太」の運営するチャンネルである。私の知るトランス男性といえば、まず思いつくのが漫画家のぺス山ポピーさんだ。その他、いまは疎遠で連絡もとれないような知人が幾人か、頭の中に浮かんだ。だがそれらの知人は、どちらかといえばFtX(フィメールがXに)という感じだった(というかBOI)。性自認は男性寄りで、身体は女性、となるとFtMっぽいが、当人が自分の身体の女性的特徴を肯定している場合はFtMではなく、FtXという感じがする。そういう場合もあることを考えると、性というのは、ぱっきりとは分別しかねるもので、グラデーションという先人のたとえがぴったりくる。ともあれ、FtXっぽい人しかリアルには知らなかった私は、性適合手術を受けて性別をスイッチ=移行したトランス男性をこの目で見るのは初めてだった。(MtFはてれびでよくみるし、2ちょでもみる)
「キットチャンネル」には、「元女子あるある」などトランス男性ならではの知見や悩みを披露する動画がアップされている。そのほか、「ドッキリ」や「カップルユーチューバーあるある」などこれぞyoutuberという感じの動画(※にわか視聴者の意見です)が上げられている。他に多いのが旅動画(台湾やタイでのフリーハグやヒッチハイク、LGBTにまつわる街頭インタビューなど)で、これも同チャンネルの大きな特徴となっている。
シスジェンダー女性の共感を得やすい
キットチャンネルの片方「英翔」は、祖母だけ日本人で中国語が話せる。家族がばらばらになったり、また戻ったりと、山あり谷あり、苦労の多い半生をおくっている。筆者の私自身とも重なる部分があり、好感ももてた。
そしてもう一方の「奏太」は、両親が聾であり、手話ができる。大阪出身で、関西弁も話せる。23歳まで性適合手術を受けず戸籍も女性だったそうだ。当時の写真を見ると、化粧をしていたり、髪を伸ばしていたりと、「女になるためにがんばってた」感がある。つまり、「与えられた身体的な性に従って生きねばならない」と、もがいた時期があったのだろう。これはじつは、シスジェンダー寄りの女にも、かなりの共感性のある話題なのである。誰もが最初から「うぉんな!」だったわけじゃない。歴代糞男たちの決めた糞みたいな女らしさだって、身にまとえば槍&盾になるのだと拙い知恵をつけてしまうのが日本人女性ではないだろうか。そんなのは、他者の決定した「清潔感」を身にまとうのとまったく同じような迎合である、と私は思う。のだが、まあとにかく、「女になるためにがんばってた」時代がある「奏太」は、多くの女性の共感をかっさらっていったのではないか、と想像する。そして彼は、あまりにも、あまりにもイケメンだった。男としてかわいかった。その仕草や、笑顔のつくりかた、笑いかた、手話、やわらかな関西弁、もうなんかぜんぶに恋をしてしまうような。そう、この日記は、じつは奏太もとい「かなしゃす」に恋した3日間をふりかえる日記なのだ。。。
※うわああああああああ読まないでえええ
私はかなしゃすの手話動画を何度も再生し、かなしゃすが別れ話をしているカップルユーチューバーあるある動画や、かなしゃしゅが浮気されるドッキリのカップルユーチューバーあるある動画を見漁った。そして「はぁ、なんなの、好き」「元気出る・・」と心のなかで甘いためいきをつきまくりなのだった。そんな自分にキモイ真似はやめろ(怒)とぶちぎれる余裕もないくらいにハマっていた。
奏太はんのTwitterを見てもたいしたことは呟かれていなかった。私はそのおもんなさに愕然とする一方で、「だがそこがいい!!!!」と結論づけていた。たいてい、人は相手のにんげんらしさ(抜け感)に恋をするのだから。じっさい、いつも、いっつもそうやってこいにおちる。
コメントに反応する動画
ところで、私はYouTubeをゲスト利用(?)しているだけで、チャンネル登録はしたことがない。チャンネル登録をするとコメントが付けられるのだろうと思う。それらのコメントを見てみると、英翔と奏太の2人を男性アイドルだと思ってる感じのシスジェンダーっぽいコメントが多いのだった。
さてさて、長くてどうせ誰も読んでないんだろうけれど、昨日のことである。
YouTube「キットチャンネル」が更新したのは「【注意】不快な方は見ないでください。」という動画だった。サムネイルには眉間にしわを寄せた2人の顔、そして「アンチコメント 物申す」というカラフルなテキストがどかんと掲げられている。
動画では、英翔氏が、レイシズムを感じさせるもの、偏見を感じさせるアンチコメントなどをピックアップして、いつもの長広舌で反論している。そこまではいつも通りだった。だが後半以降、2人はNOTアンチコメント(「黒髪のほうが似合ってた!」とか「かっこいい♡」とかいう、恋してあほうになっちゃった女たちのコメント)に対しても愚痴をいいはじめたのである。これは、いままでの動画で培ってきたものを唾棄するかのような愚痴大会である。なぜこのようなことをしたのか、もし2人にメリットがあるとすれば、炎上商法かな、と思う。
「男性アイドルとして消費されるつもりはない」のでは?
炎上を狙っているのかしらと思わせる理由はいくつかある。動画の制作工程には、企画段階というものがある。企画段階で「お酒の力を借りて」という設定をつくったのだとすれば、それ自体にアンチホイホイ感が満載である。そして動画制作に欠かせないのがカメラ撮影後の編集作業である。編集は時間がかかるし集中力がいるので、酔ってちゃできない。それなのに、酔っぱらいの失言をカットせずに、むしろそれを生かして動画を作ってしまうというのはもう…。
もしも、炎上など狙っていない!率直な意見を主張しただけ!…というのなら、おそらく2人は「消費されたくない」のだろう。男性アイドルとして消費されるよりも、クリエイターとして影響を与えたいというような願望が、2人にはあるのだろう。
だとすれば、私は自分を嫌悪する。男性アイドル消費的なかたちで2人の動画を見ていたことを、まじきもいこんな自分もうやだぁぁぁああ><。。。。って嫌悪するです。
恋すると元気なあほになる
コメント欄を眺めていると、女(男を好きな心のことをここでは女といいたい。)たちの言い分がたっぷりと載せられていて面白い。みんな恋してたんやな、と思わされる。恋に幻想はつきもので、その幻想が壊されたときの、女の情念だいばくはつが見られる。こういうのを外で見ているのは面白い。チャンネル登録していなくてよかったぁと思った。(してたら、私も女の情念ねっちねちこねこね♪してたんちゃうか、間違いなくしてたな、てかいまもある意味してるよね・・
ありがとうきゃにゃしゃす!
2人は、「外貌じゃなくて動画の中身を見て欲しい」と、主張していた。(まるでビジュアル系と呼ばれることを嫌いMステのスタジオから立ち去ったとあるバンドみたいに)
でも、奏太くんが私好みの外貌・仕草・うごき方・喋り方でなければ、たぶん私は動画を2、3本みて、終わらせていたのではないだろうか。もしかしたら日本のLGBTsの新たな情報発信源としてブログに載せていたかもしれない。親指Pとかリリースとかの小説紹介と並べて紹介していたかもしれない。でもそうはならなかった。かなたくんをアイドルとして消費していたのかもしれないということに気づき、そんな自分を嫌悪するから。
というわけで私の恋は冷めたけど、かなしゃすの人間としての魅力は変わらない。
(しかし、この動画がじつは次作動画の前振りだった!とかであればいいな。彼らの発言とアティテュードがぜんぶ演技であればいいな。 としつこい。)
はらへった~
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